男性のお客様より手縫底付けの外羽根紳士靴の調整をご依頼いただきました。
普段は営業にて馬喰町を闊歩し、イギリス靴をこよなく愛するS様。
S様:『前から気になっていたんですけど、他所のオーダー靴の調整も可能ですか?』
との問いに、勿論、喜んで対応させて頂く旨をお伝えしました。
S様:『右足の指がどうしても当たるんです。革が柔らかくなるまで待ったんですが…』
早速靴を拝見します。すると、履いた時点で、いくばくかの踵の緩みを訴え、歩行時に右母趾とアッパー上部の摩擦の痛み、右小趾の痛みがあるとのこと。その位置と状態を確認します。
この状況から考えられる要因は、踵の固定が弱い、足が前に滑る、もしくは踵が押し出されていること。その現象を引き起こすのが、足部不良運動(過回内、過回外)なのか、それとも靴の各種パーツの誤差によるものかを見極める必要があります。
この歩行姿勢の分析より、右足が過回外、左足が過回内の傾向が強ことが判明。歩行軌跡の分析によって、左測推進期の過回内より右側接地期の過回外を誘導し、右側推進期の過回外に至ることも判りました。
これらを把握した上で、インソールの設計を考え作っていくのです。
左側ショパール関節部と母趾級側面から母趾内壁へのサポートを中心に作製し、
右側は立方骨部はアーチ状の付加、第5中足趾節関節部はややウェッジ形状を強めに作製させていただきました。
インソールを装着し、履いてみていただきます。歩いてみると、足の痛み、かかとの緩みは消えているとのこと。
S様:『おおっ!別の靴みたいです。』
翌週、その後の靴の履き心地状態をおうかがいしました。
S様:『調子良いです。でもまだちょっと気になるんですよ。』 とのこと。
屋外で長い時間歩くと小趾が当たり始めるご様子。
拝見すると、少し赤くなっていたのも確認できました。
歩いてもらうと、歩行姿勢、歩行軌跡共に、足部不良運動が是正されている状態。
このことで遠因は靴のパーツ誤差と判断しました。
結果、ヒールのアゴの設定角度が靴底着地位置に対して直角になっていない点、もう一つは木型状踵部の外側のスペースが不足している点が判明し修正を加えます。
S様:『うおっ!』 という声が上がり…
『バッチリです!今度別の靴もお願いします!!』とのこと。
後日、指の痛み・踵の緩み共に解消された旨を賜り、
ご好意で実家で栽培されている林檎を頂きました。
S様、ご来店ありがとうございました。
オーダー靴では、踵をしっかりと固定する為に履く方に合わせて木型を作る。
当然、靴内と同じ向きで足が固定される。
この状態でヒ-ルのアゴが歩行時の着地位置に対して直角に切れていないと足はその位置に誘導される。つまり“木型の着地位置とヒールが誘導する着地位置の誤差”を生み出す。
この誤差により、踵骨や周辺の軟部組織が外側に動き、外側のヒールカウンターに当たりながらの歩行となる。
足が硬い方は靴擦れになりやすいが、一方、足がやわらかい方は踵部の軟部組織に押し出される形になり、足が外転方向に誘導され、小趾がアッパーに押し付けられ痛みが出やすいのが特徴と言えよう。
靴の踵部を足に合わせた場合、もしくは堅固な素材を用いるゆえに起こる問題である。
既製靴は踵部を大きく作る為、踵の内・外共にに余裕があるのでこの問題は生じにくい。
既成靴とオーダー靴の調整方法に関しては、オーダー靴の方がシビアである。
足に合わせずゆえに起こるトラブルと、
足に合わせて作るがゆえのトラブルは、症状は似ても問題点は非なるものである。
上記の対応例がオーダー靴を選ばれる方、その調整に対応される方の一助になれば幸いである。
普段は営業にて馬喰町を闊歩し、イギリス靴をこよなく愛するS様。
S様:『前から気になっていたんですけど、他所のオーダー靴の調整も可能ですか?』
との問いに、勿論、喜んで対応させて頂く旨をお伝えしました。
S様:『右足の指がどうしても当たるんです。革が柔らかくなるまで待ったんですが…』
早速靴を拝見します。すると、履いた時点で、いくばくかの踵の緩みを訴え、歩行時に右母趾とアッパー上部の摩擦の痛み、右小趾の痛みがあるとのこと。その位置と状態を確認します。
この状況から考えられる要因は、踵の固定が弱い、足が前に滑る、もしくは踵が押し出されていること。その現象を引き起こすのが、足部不良運動(過回内、過回外)なのか、それとも靴の各種パーツの誤差によるものかを見極める必要があります。
この歩行姿勢の分析より、右足が過回外、左足が過回内の傾向が強ことが判明。歩行軌跡の分析によって、左測推進期の過回内より右側接地期の過回外を誘導し、右側推進期の過回外に至ることも判りました。
これらを把握した上で、インソールの設計を考え作っていくのです。
左側ショパール関節部と母趾級側面から母趾内壁へのサポートを中心に作製し、
右側は立方骨部はアーチ状の付加、第5中足趾節関節部はややウェッジ形状を強めに作製させていただきました。
インソールを装着し、履いてみていただきます。歩いてみると、足の痛み、かかとの緩みは消えているとのこと。
S様:『おおっ!別の靴みたいです。』
翌週、その後の靴の履き心地状態をおうかがいしました。
S様:『調子良いです。でもまだちょっと気になるんですよ。』 とのこと。
屋外で長い時間歩くと小趾が当たり始めるご様子。
拝見すると、少し赤くなっていたのも確認できました。
歩いてもらうと、歩行姿勢、歩行軌跡共に、足部不良運動が是正されている状態。
このことで遠因は靴のパーツ誤差と判断しました。
結果、ヒールのアゴの設定角度が靴底着地位置に対して直角になっていない点、もう一つは木型状踵部の外側のスペースが不足している点が判明し修正を加えます。
S様:『うおっ!』 という声が上がり…
『バッチリです!今度別の靴もお願いします!!』とのこと。
後日、指の痛み・踵の緩み共に解消された旨を賜り、
ご好意で実家で栽培されている林檎を頂きました。
S様、ご来店ありがとうございました。
オーダー靴では、踵をしっかりと固定する為に履く方に合わせて木型を作る。
当然、靴内と同じ向きで足が固定される。
この状態でヒ-ルのアゴが歩行時の着地位置に対して直角に切れていないと足はその位置に誘導される。つまり“木型の着地位置とヒールが誘導する着地位置の誤差”を生み出す。
この誤差により、踵骨や周辺の軟部組織が外側に動き、外側のヒールカウンターに当たりながらの歩行となる。
足が硬い方は靴擦れになりやすいが、一方、足がやわらかい方は踵部の軟部組織に押し出される形になり、足が外転方向に誘導され、小趾がアッパーに押し付けられ痛みが出やすいのが特徴と言えよう。
靴の踵部を足に合わせた場合、もしくは堅固な素材を用いるゆえに起こる問題である。
既製靴は踵部を大きく作る為、踵の内・外共にに余裕があるのでこの問題は生じにくい。
既成靴とオーダー靴の調整方法に関しては、オーダー靴の方がシビアである。
足に合わせずゆえに起こるトラブルと、
足に合わせて作るがゆえのトラブルは、症状は似ても問題点は非なるものである。
上記の対応例がオーダー靴を選ばれる方、その調整に対応される方の一助になれば幸いである。