先日、脚長差のご相談にて来店されたT様の靴が出来上がった。
靴が今か今かと納品を待っている。
実はこの靴、中底をアーチ形状で補高した大変希少な構造になっている。

0926_01_w600
脚長差による歩行障害への対応は、大きく分けて2種類ある。
一つはインソールでの補高、もう一つは靴の本底(アウトソール)での補高。

インソールによる補高は
外から見ても左右同じに見える、歩いた後に微調整が可能という長所がある。
しかし、
2cm以上の補高はできない。(ヒールカウンターに踵骨が収まらないため、踵が脱げ始める)
  ※靴や踵の大きさによってはもう少し可能だが。
つまづき易い(トゥスプリングは変わっていないため、蹴り出し時に引っ掛かる)
という致命的な問題がある。

靴の本底(アウトソール)での補高は
どんな脚長差でも対応できる、高さに併せてトゥスプリングを設定出来るのが長所である。
(トゥスプリングが設定されていない靴は論外。蹴り出し時に靴が転がらず、膝を過伸展させ痛みの原因となる)
対して、問題はまず見た目にすぐ分かってしまう点。
そして致命的なのは、靴底故に削れてしまうという点である。
極端に削れた靴はバランスを崩しやすく危険なため、常にチェックを怠ってはならない。

中底をアーチ形状にして補高する手法はこれらの欠点・問題点を全てクリア出来る。
中底故に削れることはなく、左右同じく見える。
補高調整したあとに木型を密着させてつり込むため、踵は脱げず、トゥスプリングの設定も詳細にできるのだ。
しかし、歩行分析学・歩行運動学・木型の構築理論・製靴技術が高いレベルで融合しないと実現出来ない。
1階が治療院、2階が店舗兼木型修正フロア、3階が製甲・つりこみフロア、4階が教室と
足と靴の総合施設だから可能となった。

整形外科に勤務していた時はインソールでの補高、靴底での補高に限界を感じていた。
当時は夢のまた夢、机上の空論であったが、今こうして実現している靴を、T様にお渡し出来ることに感謝したい。
納品日はもうすぐ、楽しみである。